「比企丘陵の天水を利用した谷津沼農業システム」が日本農業遺産に認定されました。
森林公園駅から熊谷キャンパスに至るバス路線。日本農業遺産の景観を見ながら通学でき、ため池の水のみを使った農業を風土共創して維持してきた歴史を思い浮かべながら、日常的にSDGs教育を受講できる素晴らしい環境ができました。
比企丘陵のため池(谷津沼)の総数は240箇所、0.54%と高い密度になっています。谷津沼が特に多く見られる滑川町は全国最高密度の3.30%、嵐山町は1.34%、小川町は0.76%であり、複数の自治体にまたがった集計がないので比較できかねますが、比企丘陵のような地域の括りでは恐らく日本一の谷津沼の密度となっています。
これらの谷津沼の多くは天水を貯蔵し、自然落下で下流の谷津田を涵養し、さらに下流の圃場を涵養して河川に流れ、谷津沼に含まれる有機物を圃場に運んで農業が営まれ、その歴史は1500年前から持続的に引き継がれてきたと言われています。
このような谷津沼を中心としたエコシステムで地域のコミュニティーを温存し、谷津沼を管理し、水を大切に使ってきた生物文化多様性の文化を次世代につなぐべく、比企丘陵農業遺産推進協議会(立正大学は賛助会員、後藤教授(環境情報学分野)が幹事会に参加し、現地調査会ではプレゼンを行ってます)が、滑川町、熊谷市、深谷市(2019年迄)、東松山市、小川町、嵐山町、吉見町、寄居町で構成される協議会が2017/7/7に発足したことを受け、立正大学谷津田イノベーション研究会を組織し、自治体間にまたがった情報共有や新たなビジネスモデルを作るととを目途として組織しており、研究会の開催を始め、谷津田米・日本酒・酒粕パン作り・販売、熊谷圏オーガニックフェス、オガワオーガニックフェスへの参加などを通し多様なエコシステムが出来、この秋には、環境アートフェスが開催され、60年以上途絶えていた雨乞いの儀式を現代風に復活させてます。
谷津沼から自然に供給される有機物や土壌微生物がもたらす栄養素で、谷津田米が無農薬無化学肥料でできている理由につき、環境データサイエンスを使って博士論文のテーマにする博士課程の学生(地球環境研究科環境システム学専攻)も出てくるなど、天然記念物のミヤコタナゴの遺伝子解析を行ってそのルーツを調べるなど未解明の研究テーマも多様に存在します。是非興味を持っていただけるかと思います。
今後、立正大学谷津田イノベーション研究会は、世界農業遺産申請を支援すべく、有機農業の発祥の地小川町で行われている農業システムに学び、土壌微生物多様性・活性値や化学分析など、従来の経験のみに頼らない農業、農業従事者不足を農福連携や一般参加で行うソーシャルファームの推進、元気な農家、6次産業実践者の見える化、シェアサイクルなどを使った比企丘陵のため池を中心としたエコツアーの推進支援などのプロジェクトを開始しました。