環境気象学コロキウムは、環境気象学に関する最新の研究・トピックスの紹介や、気象予報士試験問題の解説・討論の場として、月1回程度開催しています。参加は自由です。
概要
環境システム学科には、気象に興味を持っていて、「気象予報士になりたいという」学生も多くいます。しかし、気象予報士試験は一般に難関資格と言われ、在学中に合格する学生は少ないようです。私は、2017年夏の気象予報士試験で、なんとか合格して気象予報士になることができました。今回の話題提供では、私が気象予報士試験の勉強で活用した参考書や、通信講座、あまり知られていない、予報士の勉強に役立つWebサイトに至るまで、包み隠さず全てお話しようと思っております。
概要
20世紀半ば以降、全球平均で、対流圏は暖まり成層圏は冷たくなってきていることが観測されている。その観測事実が生ずる原因は、基本的に、二酸化炭素を代表とするよく混合された(すなわち大気中の混合比が一定とみなせる)温室効果気体(Well-mixed greenhouse gases: WMGHGs)の大気中の増加である。WMGHGsの増加による成層圏の降温と対流圏の昇温のメカニズムの本質を考察してみる。短波放射エネルギーの吸収が一定という条件(例えば、オゾン濃度が一定)を付す。WMGHGsの増加が射出率の増加および長波吸収率の増加を意味することから、WMGHGsの増加による成層圏の気温の下降は、射出率の増加による射出される熱放射エネルギーの増加による冷却効果と長波吸収率の増加による増加した長波入射エネルギーの吸収による加熱効果という相反する2つの効果の正味の結果として、冷却効果が勝ることによる。WMGHGsの増加による対流圏の気温の上昇は、同様の相反する2つの効果の正味の結果として、加熱効果が勝ることによる。WMGHGsの増加による成層圏と対流圏の降温または昇温を決める条件は何だろうか?ここでは、単純な2層大気の放射平衡モデルを導入して、この問題を考える。
なお、この研究は、かつての学生である後藤慎司氏との共同研究である。
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様々なメディアやインターネット上で”気象ビジネス”と言われる企業や業態が紹介されています。
一般的なイメージとして”気象ビジネス”=”予報業務”が定着していると考えます。弊社では”予報業務”ではない事業形態として、気象ビジネス業界において20年以上活動させていただいています。
本講演では”システムインテグレーター”としての弊社業務紹介と共に、十数年前に私がどのようにしてこの業界と出会ったのか、そして今までどのような経験をしてきたのかを発表させていただきます。
気候・気象学の世界的権威として知られる、大村纂先生の特別講演会が開催されます。東京大学卒業後、ヨーロッパで研究活動を行ってきた方です。特に、ヨーロッパで気象学の中核を担う ETH Zurich(チューリッヒ連邦工科大学)での環境学部の立ち上げを行い、以降は同校で長らく教鞭をとってきました。立正大学では、大村先生を招聘客員教授として度々お招きしていますが、今回は下記の日程で来日し講演会を行ってくださる運びとなりました。名実ともに世界を舞台に活躍されてきた大・大・大先輩の講演会です。ぜひ聴きに来てください!
12:50 ~ 14:20 @ アカデミックキューブ101室
気候を全球的に総観すると19世紀末以来温暖化の傾向にある。 その原因は一義的には二酸化炭素をはじめとする多くの温室効果ガスの増加によりひきおこされ、幾つかのフィードバック過程を経て20世紀末までには0.8°Cの昇温を引き起こした。この分野の研究は200年近い歴史があり数多くの有能な科学者が貢献してきた。内容の進歩を分析的に見ると観察、理論、追証の面で極めて分厚い成果が蓄積されている。この温暖化の地球と人類の将来に対する影響の切実さを理解すると今すぐにでも対策を取らねばならない状況に直面している。それにもかかわらず、米大統領トランプ氏のように相変わらず気候温暖化懐疑派/反対派という人々が対策を遅らせようと奔走する現状を見るに、もう一度現行の温暖化現象を原点に戻って見直し、また反対派の意見の内容を分析してその真偽を正し将来の確実な展望をしてみよう。
14:30 ~ 16:00 @ アカデミックキューブ414室
環境学は医学と並んで社会において極めて重要な役割を担う学際的分野である。ただその歴史が浅いため方法論の確立には今後の努力と成果が必要である。私は1980年代後半にスイスで初めての環境学部の創設に参加し、その後本環境学部を世界的な学部に育てることに成功した。大学の学部/教室の名を冠した縦割り分野に並んで、学際的横並び的研究・教育体制がいかに重要であるかを具体的問題を挙げて検討し 、その研究方法には実地の観察/観測が欠かせない基本的方法であることを、幾つかの例を挙げてお話ししたい。これは18世紀から19世紀をとおし現代に続くヨーロッパで推進されてきた科学の発展の歴史と大いに関係する重要な問題となるからである。
本学地球環境科学研究所(大学院の機関)が、元気象庁長官の二宮氏をお招きして講演会を開催します。本講演会は、第26回環境気象学コロキウムとして共催されます。学部のみなさんも積極的に参加してください。
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自然災害への社会的対応策は大別して、「防災対応」と「減災対応」に分けられますが、このことが十分に理解されていません。自然災害の対応に必要な情報についても、2種類の情報があるはずですが、これも十分に理解されていません。情報の確度(精度)についても誤解があるようです。「減災対応」における情報の科学的意義についても、その社会的役割についても、もっと正確な理解がのぞまれます。また、臨機応変の対応を重視するべきか、マニュアルに従った対応を重視すべきかなど、などの問題も掘り下げたいと思います。
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世界の山岳域では進行する温暖化に伴う雪氷圏・生態系の変化および社会活動への影響が危惧されています。しかし、山岳域の天候変動は大気運動と陸面過程が密接に連動した結果生じている場合が多く、相互作用の仕組みを観測とシミュレーションの両面から正しく理解することが、これからの予測や対策に重要だと考えます。今回の話題提供では、国際プロジェクトにより明らかにされたチベット高原周辺での広域陸面の影響を強く受けた降水過程と、JALPS事業による中部山岳域での森林気象観測の結果を解説します。さらに、今年から始動した大学連携・山岳科学学位プログラムも紹介いたします。
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Watarai-sensei is back from a half-year-long sabbatical at the University of Alaska at Fairbanks. Join us for the 24th Environmental Meteorology Colloquium on Apr 26 to discover his experience and discovery up in the "high latitudes"! See you all there!
環境気象学分野では、下記の通り特別講演会とキャリアパス懇談会を開催いたします。 今回お招きするのは、安成哲三氏(総合地球環境学研究所長)と横山宏太郎氏(第35次南極越冬隊長)です。お二人とも、まさに「フィールドは全世界!」を体現してきた方々です。世界を相手に活躍されてきたお二方のお話は、exciting & motivating になること必至です。気象・気候学に興味のある方はもちろん、学部生から大学院生まで、幅広い参加をお待ちしています。
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本学環境気象学分野に所属する大学院生3名による発表です。日頃の研究成果を発表していただきます。本コロキウムは、平成28年度第2回大学院中間発表会の一部を兼ねて開催するものです。幅広い分野のみなさんの参加をお待ちしています。
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日本気象協会は熊谷市とともに,2008年に「あっぱれ・なるほど・熱中症予報情報発信事業」を開始し,熊谷市内の気象観測にもとづく熱中症指標を提供し,市民の安全確保と熊谷市の知名度アップに協力している.また「熱ゼロ」プロジェクトを立ち上げ,企業や自治体の協賛による熱中症予防啓発活動を行っている. さらに,再生可能エネルギー導入に関連する話題も提供する.風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進むとともに気象情報の重要性が増してきている.安定した電力供給のために気象情報がどのように活用されているか紹介する.
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雷は雷雲内に蓄積した電荷が大気の絶縁を破壊する事によって発生する.しかし,この雷雲内でどのように電荷が蓄積し,放電が始まるかについてはいまだわかっていないことが多い. 最新の雷観測では,雷雲内の放電点を3次元的に観測し,その位置や電荷分布を知ることが可能になってきた.また雷の予測ではこれまで大気安定度などを用いたポテンシャル予測が主だったが,より雷雲内の物理量に基づいた予測が試みられるようになってきた.これらを組み合わせることで,雷を発生させる雷雲の内部構造を知り,予測精度を高める研究が行われている.これら最新の研究について紹介する.
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2007年8月16日には熊谷気象台で最高気温40.9℃を記録し日本の最高気温を74年ぶりに塗り替えるなど、埼玉県は国内で最も夏場の気温が高くなる地域の1つとして知られています。また、長期的にも県内の気温上昇が続いており、1897年から2014年までに熊谷気象台における年平均気温は2.03℃/100年の割合で上昇しています。この気温上昇により、農業や健康影響、自然環境などへの様々な影響も出始めています。今回は、過去の気象観測による気候の変化及び将来の気候予測に関するこれまでの知見について解説します。また、気候変動によって様々な影響が生じた時に被害を抑えるための国や地方自治体の方針についても、解説します。
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講演概要: 「いま大学で学んでいること」と「将来やりたい仕事」。皆さんの中で、この2つはどれぐらいつながっていますか?実は、全然関係ないと感じるような勉強や経験も、すべて仕事に結びついています。多岐に渡る気象の仕事をするなかで、学生時代に学んだことがどのように活きたのか、気象キャスターや民間気象会社での経験を通してご紹介します。
概要
講演概要: IPCC第 5次報告書によると、「気候システムの温暖化は疑いの余地がない」状態にあるとされている。温暖化による影響、例えば、台風などの気象の諸現象の変化や人間社会への影響について活発な研究が続いているが、明確でないことが多い。 私はこれまで、領域気候モデルを用いて地球温暖化の影響評価を行ってきた。評価の対象は、熱帯低気圧や梅雨前線、そして熱中症リスクなどである。本発表では、これまで行ってきた温暖化リスク評価の結果を紹介するとともに、地球温暖化研究がどのようにして行われているかお話しする。
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国土交通省のMPレーダ(マルチパラメータレーダ)等のデータを使用して、2013年9月4日栃木県鹿沼市で、2013年9月16日埼玉県熊谷市等で発生した竜巻について解析し、竜巻が発生した環境場及び発生した原因を考察した。
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約半世紀にわたる気候学研究遍歴を、以下の6つのトピックスを中心に概説いたします。未来ある学生たちのこれからに少しはヒントとなりそうな冒険・発見の寸話をお話しします。
①都市気候事始めとして電車による冒険的移動観測
②モグラ視点の気象研究に取り組み、地中のヒートアイランド(HI)発見
③盆地都市(福島など)と海岸都市(広島など)のHIと大気汚染
④海外(USA・中国・インドなど)諸都市の都市大気環境調査
⑤日本一高温都市熊谷のHIと熱中症
⑥3回の国際生気象学会にHI研究発表参加
概要
みなさん、こんにちは!私はウェザーニューズの気象予測の現場で日々予報作成等に従事しております。当日はウェザーニューズの紹介や私の仕事内容の他に、今後社会で活躍される皆さんへ向けて、少しでも有益なアドバイスができるように多くの話題を提供できたらなと思います。興味がありましたら是非足を運んで下さいね。また、皆さんからのご質問等も極力受けたいと思いますので、何か疑問がありましたら当日は遠慮なく質問してください!気象予報士を目指している方々は、当日ちょっとしたアドバイスを準備していますので、是非聴きに来て下さい。では、皆さんにお会いできるのを楽しみにしております。
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北陸地方はフェーン現象が比較的発生する地域であり,宮川−神通川の谷筋を抜ける風が卓越する観測事例がある事や,谷筋を抜けるギャップ流の存在がフェーンによる昇温を強めるという研究指摘もある.そこで,宮川−神通川谷筋に沿って地上観測を行い,フェーン発現時の谷筋内の大気場と富山平野の昇温との関係性について調査した.昨年の観測結果ではフェーン発現時に富山平野側谷出口に向かい温位の上昇がみられた.
概要
線状降水帯の発生・発達における地形,下層の高相当温位や鉛直シアなどの重要性が先行研究により明らかになっている.また,線状降水帯は局地前線に伴い発生する場合がある.しかし,局地前線に伴う線状降水帯の発達・維持についての過程は明らかになっていない.そこで,領域気象モデルWRFを用いて,2013年8 月9日東北地方での大雨を対象とし,降水系の維持・発達の過程を調査した.再現計算から,975hPa高度の相当温位の水平勾配が大きい領域で風の水平シアが大きく,これらの領域は降水域の発生位置と対応していた.従って,局地前線が発生したと考えられる.また,この領域では風の鉛直シアが大きく,局地前線による影響が降水系の維持・発達に働いたと考えられる.加えて,地形改変した感度実験の結果から降水量が減少したことから,地形による強制上昇も降水系の発達・維持に影響したことが示唆された.
概要
高山帯の生態系は地球温暖化などの気候変動に対して脆弱であるといわれている.気候変動が高山生態系に及ぼす影響を把握するためには,高山帯における気候変動の実態把握がまず不可欠である.しかし,日本の山岳地では長期間にわたり観測されている気象データはほとんど存在しない.そのため,さまざまな資料や代替データなどを組み合わせることで過去の気候変動の復元を行う必要がある.
本研究では,中央アルプス木曽駒ヶ岳において得られたハイマツの年枝の成長量データを用いて,過去約30年間における気温との対応関係について調べた.その結果,両者には正の相関がみられたことから,ハイマツの年枝長の計測により,夏季の気温をある程度復元できる可能性が示唆された.
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最新の雷研究をレビューし、講演者が特に力を入れている「冬季雷」と「航空機の被雷防止法の新しい提案」や「種子島ロケット打ち上げ基準等の見直し状況」などの話題を提供する。
概要
1994年に気象予報士制度が創設されて以来、2013年6月1日現在、8774名が気象予報士として登録されている。気象予報士は、気象庁から提供される数値予報資料等高度な予測データを、適切に利用できる技術者で、予報業務を行う事業者は、現象の予想を気象予報士に行わせることを義務づけられている。
このため、プロの気象予報士として仕事に従事するには、高度な知識、技術等が必要である。プロの気象予報士として必要な知識や能力(①気象学的な知識、②社会(学)的な知識、③伝える、表現する能力)、プロとしての天気図を見る3原則(①天気図は大きく特徴をつかんで、細かく見る、②天気図は立体的にみる、③数値予報の結果をしっかり理解する)について解説する。
一人でも多くの人が気象予報士として活躍されることを期待する。
概要
日本は世界的にみても雨が多く降る国である。このため、雨を生活の資源とされているが、それと同時に大雨や豪雨は自然災害の要因である。長時間にわたる豪雨や集中豪雨は梅雨前線や秋雨前線、台風による総観規模の影響が関係しているが、近年では狭い範囲で予想に反した大雨という印象がある。大雨が持続する環境では積乱雲が次々に発生・発達を繰り返し、組織化する必要がある。
今回は数値計算による平成20年8月末豪雨の事例解析を行った。平成20年8月末豪雨は8月26日から8月31日まで降り続き、愛知県を中心とする東海、関東、中国地方において顕著な被害をもたらした。特に、愛知県岡崎市では29日2時の前1時間降水量が146.5mmに達し、8月の最大1時間降水量が1位を記録した。本研究では領域気象モデルによる豪雨の再現計算と地形による降水の形成・維持メカニズムを報告する。
概要
多くの研究において、近年の強雨頻度の増加が指摘されている。しかし、それらの研究では、メソスケールの視点が充分とは言えない。ここでは、暖候期の関東地方とその周辺を対象に、34年間のAMeDAS降水量を使い、メソスケールの視点も取り入れ、近年の強雨増加の実態を紹介する。
34年間(1976-2009年)のAMeDAS1時間降水量について、各地点毎に95 percentile値を求め、その値以上の1時間降水量を「強雨」と定義した。北関東の積乱雲活動に強い影響を与える熱的局地循環の強度を4段階に分類し、それぞれの強度別に、Mann-Kendall順位検定の手法を用いて強雨頻度の増加・減少傾向を調べた。図に示すように、強雨が増加した地点は一様に分布するのではなく、北関東の山岳南麓(Region SB)(熱的局地循環が強い日)と東京西部(Region WM)(熱的局地循環が中程度の日)に強雨が増加した地点が集中していることが分かる。講演では、この2つの領域の特徴と近年の水蒸気増加の実態も紹介し、強雨増加の原因についても論じる予定である。
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近年、都市域における局地的大雨が増加傾向にある。このような降水はしばしば都市の排水能力を超える降水量をもたらし、河川の氾濫等の都市型水害を引き起こす場合がある。この都市域における降水については都市による影響が示唆されているが、そのメカニズムについて明確な結論は得られていない。今回は2008年7月29日の20:50から21:10に東京都練馬で積算降水量41.5mmを観測した事例について数値シミュレーションを行い、都市地表面が降水に及ぼす影響を調べた。その結果、都市の人工排熱と建物高さが都市周辺の地上風系に影響し、降水量の増減につながっていることが示唆された。
概要
瀬戸内海西部の伊予灘に面した愛媛県大洲市長浜地区では、秋から冬にかけて“肱川あらし”という強い局地風が発生する。肱川あらしは、好天静穏日の夜間に大洲盆地で発生した冷気が川に沿って流れ、下流のV字状地形で収束・加速されることで、河口から沖合数キロまで冷気が発散する強風現象である。今回は、2012年11月に大洲市長浜地区において、肱川あらしの発生前から係留気球観測とパイロットバルーン観測を同時に試みたので、その結果を報告する。
概要
冬型の気圧配置時には、日本付近は北西季節風が卓越し、山岳風下域ではそれが時折おろし風となって斜面を吹き下り、地上付近に強風をもたらす。埼玉県熊谷地域も「赤城おろし」と言われるおろし風が見られるが、熊谷で強い北西風が吹き始める際に、周辺地域より強い昇温を伴っている事例がしばしば発生する。本研究では、熊谷で北西風の強まりとともに昇温を伴った事例を取り上げ、シミュレーション結果も用いてその特徴を考察する。
概要
地球環境を論ずるために少なくとも、(1)現状の生活レベルを保つことと、(2)そのためのエネルギー問題をどうするかを提示する必要がある。エネルギー問題の立場からは、原子力や石油・石炭・天然ガスの化石燃料の効率と発生の規模は、太陽光、水力、地熱などの自然エネルギーよりを圧倒的に大きく、現実では前者に頼ってしまう。ここでは、気象学の立場から、積乱雲に注目する。雷・竜巻・ダウンバースト・ひょうなどシビアウェザーをもたらすのは積乱雲であり、その内部では(持続性はないけれども)強大なエネルギーが発生する。この狙いはこの間にあるエネルギーを掠め取れないかということである。こうした研究はまだドラえもんの世界であるが、将来は積乱雲もどきを人間スケールでつくりそのエネルギーを実生活に適用したい。この研究の大きなメリットは、原子力の排出物の放射性物質や化石燃料の二酸化炭素が地球環境にとっては危険であるのに対して、積乱雲の場合は水であり安全であることである。また「エネルギー問題」だけではなく「水問題」も解決する方策になるかもしれない。
概要
都心の地上気温と郊外の地上気温の差は、都市ヒートアイランド強度と呼ばれる。都市ヒートアイランド強度の把握のためには、詳細な地上気温観測網や精密な3次元シミュレーション解析が有益である。しかし、詳細なヒートアイランドの形状や強度を把握することができても、それが、直ちに、都市ヒートアイランド強度形成メカニズム理解にはつながらない。都市ヒートアイランド強度形成メカニズムを理解するためには、都市構造や気象条件とヒートアイランド強度を大まかに関係付ける物理的なモデルの開発が有益と思われる。筆者は、このタイプのモデルを、都市ヒートアイランド強度バルクモデルと呼んでいる。筆者が構想する都市ヒートアイランド強度バルクモデルは未完成であるが、現在までの成果と今後の課題について、話題提供したい。