中川用語集
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層雲 (stratus)
薄い層状の下層雲。広域の空気が上昇したり冷却される場合に発生する。雲底が地上に達した場合を霧と呼ばれる。層雲から雨が降る場合、霧雨と言う。
総観気象学 (synoptic meteorology)
温帯低気圧やそれに伴う前線やジェット気流などの総観規模の天気系の構造や行動を扱う気象学。総観規模の天気系に関する議論は総観図(synoptic chart)を作成した上で行うことが一般的であるため、この名がある。総観synopticとは、「1つの図にして観る」あるいは「共通の観点から観る」ことを意味しており、同じ時間という共通の観点で、高気圧・低気圧、前線、降水域等の多くの異なる気象要素を1つの図に表したものが総観図(synoptic chart)である。
総観規模 (synoptic scale)
水平方向に数千kmの広がりを持った天気系の規模。シノプティックスケールとも言う。天気図に現れるほとんどの高気圧や低気圧が総観規模である。このため天気図のことを総観図(synoptic chart)と呼ぶこともある。
層厚 (thickness)
気層の厚さ。気層の下端の気圧をp1(hPa)、上端の気圧をp2(hPa)、気層の平均気温をT(K)とすると、層厚z2-z1(m)は、層厚の公式

z2-z1=RT/g ln(p1/p2)

により与えられる。ここで、R;乾燥空気の気体定数、g;重力加速度である。

層状雲 (stratiform cloud)
出現高度がほぼ決まっている厚さの薄い雲。出現高度により、上層雲、中層雲および下層雲に区分される。
層積雲 (stratocumulus)
鉛直方向よりも水平方向に広がる傾向がある積雲より早く動く、腕を伸ばした時の指4本分の幅より広い団塊状の下層雲。いわゆる曇り空の時の雲。積雲と同様に、雲底は雲頂より暗い。雲と雲の間に空が見えないことも多く、空の大部分を覆うことも多いが、雨が降ってくることはない。
相当温位(equivalent potential temperature)
水蒸気を含む空気塊を断熱的に上昇させ、すべての水蒸気が凝結し水蒸気圧をゼロになった時に空気塊が示す温位を相当温位と定義し、θeと表記する。水蒸気を含む空気塊を断熱的に上昇させた場合、未飽和の間は、温位は一定に保たれるが、持ち上げ凝結高度に達して水蒸気により飽和された後は、開放された潜熱により加熱される。飽和している空気塊の熱力学の第一法則は、

CpdT-RTd(p-E)/(p-E)+xsCwdT-xsR/εTdE/E=-ℓdxs

と表される。ここで、Cp;乾燥空気の定圧比熱、T;気温、R;乾燥空気の気体定数、p;気圧、E;飽和水蒸気圧、xs;飽和混合比、Cw;水蒸気の定圧比熱、ε;密度比、ℓ;蒸発の潜熱である。クラジウス・クラペイロンの式

dE/dT=LεE/(RT2)

より

(RT/ε)dE/E=(ℓ/T)dT

だから、飽和している空気塊の熱力学の第一法則は、

CpdT-RTd(p-E)/(p-E)+xsCwdT-xs(ℓ/T)dT=-ℓdxs

となる。この式の両辺をTで除すと、

CpdT/T-Rd(p-E)/(p-E)+xsCwdT/T=-ℓdxs+ℓxsdT/T2=-ℓd(xs/T)

となる。

xsCwdT/T≒0

なので、この項を無視すると、

CpdT/T-Rd(p-E)/(p-E)=-ℓd(xs/T)

となる。温位θの定義式

θ=T(1000/p)R/Cp

の両辺対数をとり、微分形を求めると、

dθ/θ=dT/T-(R/Cp)d(p-E)/(p-E)

となるので、上式は、

Cpdθ/θ=-ℓd(xs/T)

と表現できる。この式を、持上げ凝結高度LCL(T=TLCL、p=pLCL、θ=θLCL
)から大気上限(T=0、p=0、θe)まで積分すると、

Cpln(θeLCL)=xs/TLCL

が導かれる。ここで、は右辺の積分の値に等しくなるように定めた平均的な潜熱である。θLCLは持上げ凝結高度における温位を意味しているが、地上から持上げ凝結高度までは水蒸気の相変化は発生しないので温位は保存されているので、θLCLは上昇を開始する前の温位θに等しい。従って、

Cpln(θe/θ)=xs/TLCL

これを、θeについて解くと、相当温位の定義式

θe=θexp{xs(TLCL)/CpTLCL}

が得られる。指数関数exマクローリン展開すると、

ex = 1 + x + x2/2! + x3/3! +・・・

なるので、これを上式に適用し、かつ、2次以上の高次の項を無視すると、

θe≒θ{1+xs(TLCL)/CpTLCL}
   =θ+(/Cp)(θ/TLCL)xs(TLCL)
       
=θ+(/Cp)(1000/pLCL)R/Cpxs(TLCL)

と近似表現できる。
定義式(あるいはその近似式)によって相当温位θeを求めようとすると、持上げ凝結高度における温度TLCLと平均的な潜熱の適切な値を求めることが必要となるが、これは極めて困難である。このため、厳密に相当温位を求める場合には、上記の定義式(あるいはその近似式)によるのではなく、現地の気圧p、気温T、水蒸気圧eの空気塊を微小気圧幅dpづつ上昇ささせて、大気上限まで(実際には水蒸気圧がゼロと見なせる高度まで)空気塊の温度を追跡して、その後、その温度を温位に換算する手順が取られる。
空気塊が未飽和の間は、温位θと水蒸気量εe/pが保存されるので、気温Tと水蒸気圧eおよび露点τは、それぞれ、次式

T=T0(p/p0)R/Cp

e=e0(p/p0)

τ=237.3/{7.5/log10(e/6.11)-1}

により定まる。T-273.15>τの間は未飽和なので、更に気圧pを減少させて新しい気温Tと水蒸気圧eおよび露点τを求める。
T-273.15=τの高度が持上げ凝結高度LCLである。この高度での気圧、気温を、それぞれ、pLCL、TLCLと表記する。持上げ凝結高度LCLの水蒸気圧eと混合比xは、それぞれ、

e=E(TLCL)

x=xs(TLCL)

である。
持上げ凝結高度を超えた飽和空気塊の気温Tの気圧依存性は、

dT/dp=287T/(1004p)×{1+0.622ℓE/(287pT)}/{1+0.62222E/(1004×287pT2)}

なので、持上げ凝結高度から気圧pを微小変化Δp(=-1hPa)させて見積もった気温変化量ΔTを凝結(高度)温度TLCLから順次減じて気温Tを見積もる。即ち、

T=T
-dT/dp

である。その気温Tでの飽和水蒸気圧E(T)を水蒸気圧eとする。
こうやって水蒸気圧eがゼロになるまで追跡して求めた気温Tを温位換算して相当温位θeとする。
相当温位
θeは、不飽和および飽和の断熱過程を通して保存される。
現在は未飽和で安定な

θe/∂z<0

の気層は、断熱上昇して飽和に達すれば不安定になる。この様な状態を対流不安定という。

双方向反射率(bidirectional reflectance)
ある微小面にある方向(θii)から微小立体角dωiで輝度Liii)が入射している時の、入射照度に対するある方向(θ)へ反射される輝度dLii;Ei)の比で、次式

dLii)/Liii)cosθii

により定義される。これは、双方向反射率分布関数そのものである。入射方向と反射方向の二つの方向に依存するので双方向という形容詞が付けられている。
双方向反射率分布関数(bidirectional reflectance distribution function)
ある微小面において、ある方向(θii)から微小立体角dωi輝度Liii)が入射し、この入射した放射の一部がある方向)へ輝度dLii;Ei)で反射されるとき、次式、

fii)=dLii)/Liii)cosθii

により定義されるfii)を、双方向反射率分布関数と呼ぶ。上式右辺分母は微正面の照度

dEiii)=Liii)cosθii

なので、双方向反射率分布関数fii)は、

fii)=dLii)/dEiii)

とも表現できる。つまり、ある方向からの微小面への入射照度に対するある方向への反射輝度の比のことである。入射方向と反射方向の二つの方向に依存するので双方向という形容詞が付けられている。
相当温度(equivalent temperature)
空気塊に含まれる水蒸気の潜熱開放に伴う温度上昇を考慮にいれた温度を相当温度と定義し、Teと表記する。
気圧p、気温T、混合比xの状態にある空気塊の相当温位Teは、

Te=T+ℓx/Cp

で定義される。ここで、ℓ;蒸発の潜熱、Cp;乾燥空気の定圧比熱である。湿球温度Twが既知の場合は、

Te=Tw+ℓxs(Tw)/Cp

と定義することもできる。ここで、xs(Tw);温度Twでの飽和混合比である。上記の定義における蒸発の潜熱は潜熱が解放される際の温度に依存するので、厳密には、一定値ではありえないが、通常は、気温Tあるいは湿球温度における潜熱の値が用いられる。

測高公式 (hypso-metric formula)
高度と気圧の関係を表す式を測高公式と呼ぶ。
静水圧平衡の式(静力学方程式)

dp=-ρgdz

の辺々を状態方程式

p=ρRT

の辺々で除せば、

dp/p=-{g/(RT)}dz

が得られる。静水圧平衡の式も状態方程式も地球大気中では必ず成り立つので、この式も地球大気の中で必ず成り立つ。
この式において、温度Tを一定の値Tで代表できる(等温大気)と仮定して、上式をzについて0〜zまで積分すれば、等温大気の気圧分布式(測高公式)が得られる:

p=p0e-g/(RT)z

ここで、p0;地表面z=0での気圧、p;高度zでの気圧。上式は、気圧の高度分布が高度zに関する指数関数に従うことを示す。z=RT/gにおいてp=p0/e、z=2RT/gにおいてp=p0/e2.....となることを意味しており、RT/gをスケール高度と呼ぶ。
地球大気のTを288Kとすると、地球大気のスケール高度は287×288/9.80665=8428.6mということになる。即ち、地球大気中では、8.4km上空では気圧の値が1/eになっている。
等温大気の仮定は非現実的であるので、気温減率Γが一定の大気(多方大気)を仮定する:

T=T0-Γz。

ここで、T0;地上気温(K)であり、地球大気中の平均的な気温減率はΓ=0.0065K/mである。これを

dp/p=-{g/(RT)}dz

に代入して高度に関して0〜zまで積分すると、多方大気の気圧分布式(測高公式)が得られる:

p=p0(1-Γz/T0)g/(RΓ)

 =p0(1-0.0065z/T0)5.257

速度 (velocity)
位置ベクトルの時間変化。
ソレノイド (solenoid)

2つのスカラー物理量の単位間隔の等値面に囲まれて場が区切られてできる管をソレノイドと呼び、ソレノイドが形成されるような場をソレノイド場と呼ぶ。例えば、単位間隔の等圧面と等比容面の組み合わせによって区切られるソレノイドは、等圧面-等比容面ソレノイドisobaric–isosteric solenoidと呼ばれる。各物理量の傾度が大きいほどソレノイドが小さくなり、また等値面が交わる角度がおおきいほど一定区域内のソレノイドの数は多くなる。
 ソレノイド場は、傾圧場とも呼ばれ、冬季の日本海上における寒気噴出し時等によく見られる。下図は、1963(昭和38)年1月21日午後9時の850hPa天気図(日本海上のみ)である。実線は等圧力面高線、破線は等温位線であり、両等値線は大きな角度で交差していて、温位・等圧面高度のソレノイド場を形成している。この高度の風は地衡風と看做せるので、低圧側(日本海北部側)を左に見て等圧線に平行に吹いているが、等温線はこの風の流線と大きな角度で交わっているので、風は低温域(中国大陸側)から高温域(日本列島側)に吹いており、寒気移流が強いことを物語っている。

1963(昭和38)年1月21日午後9時の850hPa天気図(日本海上のみ)
(小倉・浅井, 1975:『海洋気象』東京大学出版会より)

 熱力学第一法則は、温位をθとすると

dQ=CpT/θ{∂θ/∂t+V・∇θ+ω∂θ/∂p}

と書ける。上式右辺の{}内第1項と第3項は、それぞれ、1℃/dayのオーダーで、第2項の移流項に比べて1桁小さいので、簡単化のために省略すると、

dQ≒CpT/θ{V・∇θ}

となる。更に、風を地衡風近似すると、上式は、

dQ≒CpT/θ{(1/fρ)k・∇p×∇θ}=CpT/θ{(1/f)k・∇ψ×∇θ}
  =CpT/θ{(g/f)k・∇Z×∇θ}

と変形できる。

∇Z×∇θ=|ΔZ/Δnz|×|Δθ/Δnθ|sinα=ΔZΔθ(sinα/ΔnzΔnθ)=ΔZΔθ/ΔA

と表現できるから、

dQ≒CpT/θ(gΔZΔθ/fΔA)

と表せる。この式を、日本海全域(面積A=0.84×106km2)で平均した上で、気団変質のおよぶ気圧層厚Δpについて積分すると、日本海全域における平均の気団変質の大きさ(日本海からの顕熱補給量)を求めると、

dQΔp/g≒CpT/θΔp/g{(gΔZΔθ/fΔA)ΔA}/A=NCpT/θ(ΔZΔθΔp/fA)

となる。ここで、Nは、等圧面高度Zと気温Tの等値線をそれぞれΔZ、Δθ間隔で描いた場合にできるソレノイドの数である。
 上図の場合、ΔZ=20m、Δθ=2K、Cp=1004J/kg、Δp=150hPa、f=7.29×10-5sin(40°)、T/θ=(p/1000)0.2857=(850/1000)0.2857=0.9546、N=40とすると、日本海全域における平均の気団変質の大きさとして、

dQΔp/g=NCpT/θ(ΔZΔθΔp/fA)=584Wm-2=1206calcm-2day-1

が得られる。

 

 

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