湿潤断熱減率の計算 |
未飽和の空気塊が断熱的に100m上昇(下降)すると0.976℃昇温(降温)することはよく知られており、この温度変化率は乾燥断熱減率と呼ばれています。上昇(下降)する空気塊が既に飽和している際にも、同様に温度が変化しようとしますが、その温度の変化が飽和水蒸気圧を変化させるために新たな凝結(蒸発)を引き起こし、その際に潜熱が(出)入りすることによって、100mの高度変化に伴う温度変化率は乾燥断熱減率よりも小さな値となります。この時の温度変化率を湿潤断熱減率と呼びます。雲や霧の中や激しい降水の中の気温鉛直分布は湿潤断熱減率となっています。 湿潤断熱減率(-dT/dz)は、飽和している空気塊の熱力学の第一法則から導かれ、 -dT/dz=g/Cp{1+(LεE/PRT)}/{1+(L^2ε^2E/CpPRT^2)} と表現されます。ここで、gは重力加速度、Cpは乾燥空気の定圧比熱、Lは蒸発の潜熱、Eは飽和水蒸気圧、εは密度比、Rは乾燥空気の気体定数、Pは気圧、Tは気温です。g/Cpは、乾燥断熱減率です。 乾燥断熱減率が地球上の場所や高度、気圧や気温に寄らず0.976と一定の値であるのに対して、湿潤断熱減率は、気圧および気温に依存します。それは、100m上昇(下降)した際に新たに発生する凝結(蒸発)量が気圧および気温に依存するからです。湿潤断熱減率は、気圧が高くて低温であるほど大きくなり、乾燥断熱減率に近づき、逆に、気圧が低くて高温であるほど小さくなります。学校教育の場で湿潤断熱減率の値が必要な場合は固定値0.5℃/100mを使用させることが多用されています。 |